ペルソナ3小話

真ハムが主

ライバルはP (P3P 真ハム小話)

「もううんざりです…! 先輩は…先輩は…っ!!
 私とプロテイン、どっちが大事なんですか!?

「ライバルはP」


「ぷ…あははははっ! それで喧嘩してきたわけ!?」
「笑い事じゃないよゆかり…」
「は、はは、ご、ごめんごめん、なんか真田先輩らし過ぎて、可笑しくってさ」
 間では、ずんと沈んだままの私と、笑いの中々収まらない様子のゆかりをおろおろと風花が視線を行き来させている。
「君を困らすなど…明彦の奴、一度処刑してきた方が良いようだな
「ぇ、しょけ…!?」
「ちょ、待って下さい桐条先輩! そこまではやらなくていいです…はい」
 美鶴は真顔のまま、真剣な声音で「そうか?」と覗き込んでくれる。美鶴の気持ちは有難かったが、流石に処刑は可哀想過ぎる。間違いなく真田先輩にトラウマを増やすことになるだろう。
「君がそう言うなら…」
「で、あんたはどうしたい訳?」
「うん…。あのね、先輩がプロテイン摂る事は別にいいの、ね?
 ただその、何でもかんでもプロテインかけたり、
 私にも勧めてきたりするのはやめて欲しくて…」
「確かに…先輩の為に作った手作りの料理に、プロテインかけられるのは…
 ちょっとショックかも…」
「年頃の女の子にプロテイン勧めるってのもねー」
「やはり処刑だな」

***********

コン、コン

「はい?」
「…俺だ。今、ちょっといいか…?」

 扉を開けると、少し気まずそうな表情で真田が立っていた。
「せんぱい…」
「その、さっきは悪かった…。俺が一方的に意見を押し付けてしまった、な」
 これを、と差し出された皿には、ホットケーキが乗っていた。作り立てなのだろうか、まだほかほかと甘い香りの湯気が出ていて、美味しそうだ。
「シンジに手伝って貰って、作ったんだ。…食べてくれるか?」
「…勿論です」
 笑って言えば、ほっと安堵の表情になる。
「あの、良かったら、一緒にたべませんか?」
 半分こしましょう、と言って、真田を部屋へ招き入れることにした。


「――ところで、」
「ん?」
 4分の1程食べた辺りで、私はずっと気になっていた事を訊く事にした。
大丈夫でした…?
「何がだ?」
「しょけい」
「処刑…美鶴のか」
「てことはやっぱり――」
「いや、受けてないぞ」
「え、そうなんですか?
 先輩のこと相談した時に、散々処刑処刑と言っていたので…てっきり」
「正確には“まだ”、だけどな」
「え」
「ちゃんとお前に謝って、仲直りが出来なかった暁には処刑の決行をする――
 と、言われたよ」
「…それなら良かった」
「それから岳羽には、お前がプロテインを摂取し続けた場合
 どうなるかを予測した画像というものを見せつけられたし
 山岸には、自分の作った料理にプロテインをかけられたらどんな気持ちかを
 耳が痛くなるくらい聞かされた…」
「(みんな…)」
 どうやら自分の知らない所で、仲間達が色々と手伝ってくれていたらしい。
「(相談して良かったな。…あとでゆかりに、その画像見せて貰おう)」
「…あ、別に美鶴の処刑が嫌だったから謝りに来た訳じゃないぞ!
 …これからもお前と一緒に居たいから、な」
「ふふ…わかってますよ。私も同じ気持ち、です。…例え、
 プロテインに負けたとしても…
「おいおい、俺はまだあの問いに答えてないぞ――ま、言わなくても
 当然な答えしか、持ち合わせてないけど、な」
 ほんのり甘い口付けは、何よりの彼の答えだった。


**************
「――しかし、よく見るといい筋肉だな、これは……

「真田サン…懲りねぇっスね……」
処刑だな

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夢の中で (P3P キタローとハム子小話)

「そっちはどう?」
「どう、って?」
 小さく笑う気配がして、丁度背中のすぐそば辺りに温もりを感じた。
「色々。 ――“君”は、相変わらずみたいだけど」
 それは“キミ”もね、と心の中で呟いて。しかしその中に僅かにいつもと違うものを感じて、“彼”は気だるそうに瞼を開いた。

 『夢の中で』


「――荒垣先輩、撃たれた、ね」

 読んだ小説の感想を声に出しただけの様な、他人行儀な響き。
「ああ」
 応えた自分の声もまた、お世辞にも心がこもっているとは言い難い代物だった。
「私……泣いちゃったよ。泣かないって、約束してたのに――全然、止まらなかった」
 泣いたってどうしようもないのに、笑っちゃうよね。“彼女”は空気を揺らして笑う。“君”も笑っていいよ、だって可笑しいでしょう? そう言っているようにも聞こえたが、“彼”は瞬きを一つしただけだった。そうしてああ、“キミ”らしくないと感じたのはそのせいかと行き当たり、ひっそりと息をつく。
「……怒った?」
 不快だな、と思っていたところだった。
「別に」
「私が、自分に嘘ついてるから、怒ってるんでしょ?」
「興味ない」
 わかっているなら止めればいいのに。そう思ったら余計に不快になって、“彼”は背の温もりを遠ざけるようにして“彼女”から離れた。
「ぁ、待って!」


「ごめん、“君”に隠しごとなんて、どうかしてた。…自分を偽ることは、“君”を偽ることと同じだもんね」
「どうでもいい……」
「よくない! だって“君”は――」

「――“僕”は、泣かなかったよ」

 ハッと息を呑む気配がして、それから
「うん――……知ってる」
 “君”は強いから、といつものように“彼女”は笑った。

「……ねぇ、もう少しだけ…いいかな?」
 そっと寄り添った温もりを、今度は遠ざけたりせずに。“彼”はまた、目を閉じる。

「ごめんね、――ありがとう。
 ……“私”も、頑張るから――」

またね。


 ほのかに余韻を残して背のぬくもりが消えた頃、“彼”は祈るように呟いた。

「――また。夢の中で」

**END**

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熱の行方 (P3P 荒ハム前提真ハム前小話)

 ふ、と気付くと手が止まっていた。緩慢な気だるさと眠気が脳に纏わりついて、動くことがひどくしんどい。
 全身をソファに預けてしまい目を閉じる。風邪をひいたのかもしれない。


『熱の行方』


 珍しく、放課後の活動も特にしないままに寮まで帰ってきてしまった――というよりかは、周りの人間によってほぼ強制的に帰された、という方が正しい。当人は「そんなに悪そうに見えたのだろうか」と首をひねり、帰ってからも正直あまり実感がなかった為、ラウンジで編みかけのマフラーを進めることにした――のだが、作業を初めて一時間もしないうちにそれは目の当たりになることとなり、現在に至る。

「(――少し、休もうかな…)」

 どうせ皆が帰ってくるのはまだだ。こんな所が見つかればまたうるさくどやされるのは目に見えているが、その前に部屋に戻ってしまえば良いだけの話である。――とにかく今は、休まなければ何もできそうにないのだから仕方がない。ほんの、少しだけ……

 まどろみはすぐに深い夢の底へと繋がった。揺りかごの中の様な、心地の良い眠りだった。


***

ガチャッ……ギィィ――

 バタン。

コツ、と鳴るのは硬質のブーツの音。
音が近付くは一つの影。

――止まる、音。


『おい。こんなとこで寝てんじゃねぇ』


 頬をつねられたような、やわらかな痛みを感じた気がして――意識が、光の世界へと、緩やかに引き戻される――


***

「――せんぱ……ぃ?」

 ごく自然な反応だった。だってそれは、“感覚”の記憶が、総合的な判断から脳裏に一つの姿を描き出していたからだ。だから、そう呼んでいた。“彼”を。
 ――現実を、どこか夢の中にでも忘れ去って。

「起きたか」

 瞬きを何度かしてみたら、目の前の人が自らの制服の上着を広げ、自分にかけようとしているところだということがわかった。真田先輩だった。
「お前、こんな所で寝てたら風邪ひくぞ――…というか、その顔はもうひいてる顔だな……?」
 呆れたように息をつき手に持っていたものを乱暴にかぶせ、真田先輩が隣に腰掛ける。
「(……今、)」
 頬に、触れる。そこから感じたほのかな熱は、ただ風邪のせいなだけなのだろうか。
「(――そんなわけ、ないのに…、ね)」
 “彼”がここにいるなんてこと。有り得ないのに。
 願望が生んだ幻か、幸せな夢か――どちらにしろ、“現実”ではなかったのだろう。


「――そのマフラー、シンジにか?」

 不意打ちなその言葉に一際大きく心臓が鳴った。

 そう、これは――
 誰にあげる為に、編んでいたのだっけ?

 返事がないことを肯定と取ったらしい彼は小さく笑って
「あいつ、喜ぶだろうな」
どこか遠くの方を見て言う。彼が何を見ているのかは、鈍った脳にも容易に想像がついた。
 けれど。

「――まだ、決めてません、あげる人…… (…あれ?)」

 そうなのか? 意外だな、と先輩は少し驚いた様子だったが、ほぼ無意識のうちに出てきた言葉に一番驚いたのは自分自身だった。理由を求めようとしたが、脳は機能を怠りだしていて上手くまとまらない。無駄な単語の山がせめぎ合い、頭がはち切れそうだった。
「……まぁ、何にしろあまり無理するなよ。本調子じゃないならちゃんと部屋で休んだ方がいい」
 ぽん、と一度だけ頭の上に手を置いて、彼はおもむろに立ち上がった。
「それ、その辺に置いておいてくれ。……早く休めよ?」
 いいな、無言の念押しを最後に、真田先輩は二階へと上がっていく。


 その背を眺め
 残された上着を眺め
 自らの熱でぬくもりを持ち始めた毛糸の塊を描いて――


「……――ごめん、なさい……」

 熱を帯びた、一体誰への言葉なのかもわからない自分のモノらしい声が、小さく震えて零れ落ちた。

***END***

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ミッションT! (P3P 真ハム小話)

※流れ上名前が欲しかったので、ハム子はうちの子の名前を使用しております。注意して下さいm(_)m※

********************************

「先輩のおでこのあれ、なんだと思う?」

事の発端は私のその一言だった。



 『ミッションT!』


「おでこの…って、あの白いテープのこと?」
 帰り仕度の手を動かしながら聞き返すゆかりにうん、と頷いて
「怪我か何かしてるのかと思ってたんだけど、全然取る気配ないし……」
「あんたさー、真田先輩とつきあってるんでしょ? そんなの直接聞けばいいじゃない」
「今更聞けないよ…そのテープなんですか、なんて」
 呆れたようにゆかりは息をつく。
「あんたって子は変なとこで……まぁいっか。私も詳しいことはよく知らないけど、結構前からつけてるみたいだよ」
「そうなの?」

「実はあのテープこそが真田サンの本体だとかいう専らの噂だぜぇ…?」

「へー……って、え!?」
「順平!? ちょ、あんた一体どっから湧いてきたの!」
「お嬢サン方があんまりに盛り上がってるもんで、これは俺が入る他ないっしょ!…てことで……俺も入れて?ww」
「うっわ、ウザ……行こっ、凪」
「え、ゆかりっちひど!!」
「仕方ないでしょ本当のことなんだから。ほら、凪――」
「それ本当なの!?」
「ちょ――!」
「むっふっふっふ♪ リーダーは俺っちの話、聞きたいみてーだなぁ?(にやにや)」
「……はー、もう、好きにすれば?」

 ゆかりと順平と3人で帰ることにした。

*****

順「――だからな、あのテープを取っちまうと真田サンじゃなくなっちまうんだよ、きっと」
ゆ「それって真田先輩が人間じゃないってこと? アホらし…」
凪「誰か確認してみた人っているの?」
ゆ「食いつきいいわねあんたは……;」
順「いんや、流石にそれはいねぇらしい。だってもし本当にそうだったら、大変なことになんだろ?」
凪「確かに……」
ゆ「ていうか、あんたはどう思ってる訳?」
凪「私? …私は……いくつか、あって……」
順「ふむふむ」
凪「一つは力の制御装置説」
ゆ「せいぎょ、そうち…って……;;」
凪「あれを取ると、莫大な力を抑え切れなくなって暴走しちゃう」
順「確かに真田サンはつええけど…っ!」
凪「もう一つは何かを隠してる説」
ゆ「あー、剥がすと下に何かあるってやつ?」
順「それはアリそうだなー」
凪「第三の眼とか、書いたまま消えなくなっちゃった肉の文字とか、あとはやっぱり、傷とか傷跡、かな……」
順「(……つっこんだ方がいいのか、前2つ、特に肉)」
ゆ「(この子、本気で言ってるわ)」


順「こうやって考えるとどれもありそうな気がしてくるよな…」
凪「うん…」
ゆ「…思ったんだけど、真田先輩鈍感なとこあるし、案外テープ貼ってること忘れてるのかも……なんて」
順・凪「「(確かに……!!)」」


*****

「ただいま――…!」
 出迎えの声はない。その代わりに――
「(――!! ちょっと、真田先輩が居眠りしてる!)」
「(おいおいおい! これってもしかして、すっげぇチャンス!?)」
「(ラウンジで居眠りなんて…珍しい……)」
「(リーダーっ! ときめいてる場合じゃねぇ!!)」
「(確かめるなら今だよ、リーダー!)」
 小声で言う二人の顔をそれぞれ見て、私は眉をひそめた。
「(でも……起こしたら、悪いし……)」
「(んなこと言ってる場合かっ! タルタルで言う総攻撃のチャンスだぜ!?)」
「(大丈夫だよ。真田先輩、あんたに起こされても絶対怒らないって)」
「…………」
「(よっし、ゆかりっち、俺らで玄関と階段張るぞ!)」
「(オッケー、じゃあ凪、そっちは任せたからね)」
「(え、ちょっと……!)」
 静かに、しかしすばやく持ち場へとつきに行った二人の背を虚しく見送り、ラウンジに一人ぽつんと残された私は呆然と立ち竦んでいた。普段の戦闘でのチームワークの良さが妙な所で発揮され、リーダーである自分としては、喜ばしいことなのかどうか微妙な心境である。
 そっと、音を立てずにソファへもたれるその影へと近づいた。本当に眠っているのかどうか確かめる為に、顔を近づけて覗き込む。
「(睫毛、ながい)」
 思わず寝顔に見惚れ、違う違う、と頭を振る。顔の前で手をひらひらさせ、日頃から鍛えられている高校生にしてはしっかりとした胸板が規則正しく上下するのをしばらく眺めて、本当に眠っているようだと結論づけた。

 息を呑み、恐る恐る、手を、のばす――

「(どうしてこんなことになっちゃったんだっけなー……)」

 ふと湧き出た疑問を、ぽろっと零しただけだったのに。勿論、知りたいとは、思うけど――自分の好きな人のことをもっと知りたいと思うことは可笑しいだろうか?
 知りたいのと同じくらい、聞くのが怖かった。触れるのが怖かった。だから、本当は知らなくてもいいとも、思ってた。

「(…もっと触れても、いいのかな……)」

 まだ数十センチも離れているというのに指先が震えている。

「(……――やめよう)」

 ぎゅ、と手を握り締めた。二人には申し訳ないけど、何か適当に言い訳をすればいいだろう。うん、それがいい、と心の中で頷いた――時だった。

 ぼんやりしていた為か、突然呼ばれた自分の名前と腕を掴まれたその強さに驚いて、私は盛大に体勢を崩し、間抜けな声を出して倒れ込んだ。


「――大丈夫か?」
「は、い……すみません……」
「いや、俺の方こそ悪かった。驚かすつもりはなかったんだが…」
 とにかく怪我がなくて良かったと微笑む彼の腕から離れ、今はその隣に座らされている。手をのばしかけた謎の状態でフリーズしていた私を見て、声をかけられただけだというのに…――情けなさと恥ずかしさが同時にせり上がってきて顔を上げられない。
「――ここで寝ちまってたみたいだな、俺……」
「…あの、疲れてるんですか?」
「ん?」
「い、いえその、先輩がここで居眠りしてるの、珍しいなって思って」
 その返事がしばらくしても返って来ないので、様子をうかがう為に少しだけ顔を上げる。
「…先輩?」
「――あぁ、すまん。…そうだな、少し、疲れているのかもしれん」
「……?」
 やはり、性に合わないことをするものではないな、と彼は苦笑めいたものを口元に浮かべた。

「――もっと、触れてくれて構わないんだぞ、お前は」
「!」

「俺から触れたり、抱きしめたりすることはあっても、お前からされることはあまりなかったと、最近思ってな。どこか、触れることを躊躇われてるような、そんな気がして……違うか?」
 どきり、と心臓が跳ねた。息は出来るのに、酸素が足りない気がして苦しかった。
「俺はもっとお前を知りたいし、お前に触れたいと思ってる」
 彼の真っ直ぐな瞳から逃れる術など、私は持ち得ていなかった。苦しいけれど、これはきっと、嬉しさから来ているものだ。
 だって、それは――

「……わたし、も、」

「……ん」
「私も、触れて…いいですか?」

 ほら、貴方はやっぱり笑うでしょう?

「今更そんなことを聞くな」



「さっそく、一つ聞きたいことがあるんですけど…」
「なんだ?」
「そのテープ、なんですか」
「テープ? ……なんのことだ?」


***END***

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P3P 真ハム小話

「……先輩? 何か、怒ってますか?」




 眉間に皺を寄せた真田先輩に、ちょっといいか、と腕を掴まれて、有無も言えぬままに私は連行された。
 人気の少ない所まで来て向き合う形になったのだが、難しい顔をしたままの彼はしかし口を開かない。ただじっと、私を見ていた。
 「……」
 「……」
 「…ちゃんと言ってもらわなきゃ、わからないです」
 何か気に障ることをしてしまったのだろうか。ここ最近のことをざっと回想してみるが特に思い当たる節もなく、自分に非があるならば率直にそう言って欲しかった。
 「……お前」
 いつも以上に重そうな口を開き、ぽつぽつと先輩が言葉を紡ぐ。その一つでも取りこぼしたりしないように、私は耳を澄ませた。
 「はい」
 「最近、戦闘のスタイル変えただろ」
 「え? …あー、言われてみれば…そう、ですね」
 影時間のことの方か、と内心ほっとする。しかし、それがどうして眉間の皺の原因になっているのだ? 首を傾げてしまう。
 「…無理、してるんじゃないのか?」
 「無理なんてしてませんよ」
 「無理――いや、無茶、だな」
 ふ、と息をつき、彼は肩の力を抜いた。
 「元々そんなに体力ないだろ、お前は。…そのくせ、自分の体力を削るような攻撃ばかり仕掛けてる。これを無茶と言わずにいられるか」

 力の代償なのだからそれは仕方のないことだった。敵が強くなっている以上、それを上回るだけのことをしなければ勝つことは出来ない。そして今は――負けている暇など、ないのだ。
 戦闘のスタイルが変わったというのは自分が扱うペルソナが変化したからだ。より強いものを――より強い力を扱うには、必然的に代償もでかくなる。
 その選択をしたのは紛うことなく自分自身――。負けない為に、進む為に、護る為に、選んだことだった。

 「――私なら、大丈夫ですよ」

 何も、否定したくて言っているのではないのだろう。だって先輩は、そういう人だ。その人自身が決めて選んだ道を頭ごなしに否定するなんてことを、彼は絶対にしない。
 「…お前が強いことは知っている。だが、俺は――」
 「私だって、承知の上で決めたんです。先輩が言った通り、体力そんなにないし…きっとその分皆にも、前以上に迷惑かけてしまうだろう、って」
 「迷惑など…!」

 私は笑った。

 「先輩が私を護ってくれるように、私も先輩や仲間達を護りたいんです」

 仲間が傷つくのは嫌だ
 誰かが倒れて行く所など見たくない

 貴方に、何かあったら――


ひゅ、と風を感じて、瞬間視界が真っ黒に塗り潰された。
触れた部分から感じるのは心地よい体温と、鼓動。
もうこうして彼の腕の強さを確かめるのも何度めだろう。

 「お前のそういう強さが、時々心配になる…」
 「先輩こそ、私に見惚れてる間にやられるとかやめて下さいよ?」
 「問題ない、俺はいつもお前に見惚れてるからな」
 「え、見惚れててあの強さですか! 先輩には敵いませんね」
 「――だが、」

 笑う私を一際強く抱きしめて、それから彼は吐息を感じ取れる程に私の耳に唇を寄せた。

 「ありがとう」


***END***

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